デザインのイノベーション
製品のイノベーションと言うと普通、品質の高いより良い製品を作ったり、機能を増やすことが考えられます。
しかし「コスパ」面から言うと、製品そのものの品質のクオリティや機能を高めるのは、実は一番ハードルが高く、時間も費用もかかります。
そのため最近では、技術や機能そのものよりも、デザインによってイノベーションを起こすという発想が重要になっています。
これはユーザー側からすると、技術そのものを高めなくても非常に使いやすくなるので、ベネフィットは高いわけです。
これがシリコンバレーでは、デザインシンキングなどとも言われています。
デザイン革新において最も有名な例は、やはり Apple でしょう。Apple はデザインに 100%注力した大企業のパイオニアとも言われています。
例えば最初の iPhone のモデルにしても、技術的・機能的な観点から言えば、それまでの携帯電話にも同じような技術はすでに入っていました。それに対し、ボタンがない非常にスマートなデザインと、指でタッチする触覚技術を加えたことは革新的ですが、その技術自体も以前から存在しています。
つまりiPhone で携帯電話のボタンを無くしたことが、技術革新というよりもデザイン革新だと言われる理由です。それ以前にスマートフォンでトップであったブラックベリーが、 iPhone に全く太刀打ちできなかったのは、このデザインが主な理由と言われています。
話は変わりますが、ユーザーエクスペリエンスでもう一つ非常に大きな例は、インターネットのWebページのデザインです。
下の図(1997年のYAHOO!のホームページ)のように、初期のインターネットホームページ画面は、非常にごちゃごちゃとしたものでした。これにより、インターネットの速度が低下して読み込み時間がかかるだけでなく、ユーザーにとってはホーム画面で色々と目移りし、ページ自体を読む時間もかかるし、集中できないという問題がありました。
これに対して、少なくともアメリカの革新的な企業では、ページに載せる内容をどんどん減らし、空白のスペースが多いいわゆるミニマル・デザインを多く採用するようになりました。
Zoomホームページ
Teslaホームページ
これに対して韓国は、世界で最もインターネット速度等の進んだ国ですが、今でも初期のアメリカ企業ホームページのように、ごちゃごちゃとしたウェブサイトがまだたくさんあると言われています。
さて日本企業の場合はどうでしょうか。
米国のホームページを見ることが多い立場からすると、日本企業のインターネットのUI も、韓国と同じく非常に煩雑な印象を受けます。
日本ではこのようなごちゃついた印象の、情報がいろいろ入ったページの方が好まれるのかと言うと、そんなことはないようです。
一つの例としては、料理サイトとして非常に人気があり個人的にも重宝している「クラシル」がありますが、このアプリ画面をiPad で見ると、必要なメニューの写真だけが載っており、それ以外の煩雑な説明はほとんど無いのです。
日本企業のホームページも、果たして1ページ目に大量の情報があるのが好まれているのかどうか、常にテストしていく必要があるのかもしれません。
そういえば先週、ワークショップで一緒に勉強をしている、ドイツ人のスタートアップ創業者に、
「デザインといったら、やっぱりイタリアのデザインチームが一歩先だよね」
という話をすると彼は、
「それはそうだけど、デザインは凄くいいのに実際製品まで作らせてみると、出来上がりの品質はメチャクチャなことも多いんだよね」
と言っていました。
であれば、イタリアのデザインチームと日本のメーカーを組み合わせればいいじゃん!
という話で合意したのですがどうでしょうか。このようなビジネスモデルは、既にもう誰かがやっているのでしょうか。もちろんトップの大企業であれば既にやっているとは思いますが、私的には、地元でないとなかなか知らない小さいけど優秀なイタリアのデザインチームと日本の地方の優秀な中堅メーカー、なんていう組み合わせがとても良いのではないかと思います。
Photo by Daniele Levis Pelusi on Unsplash
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