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執筆者の写真Chako

【コロナ後の世界】モバイルでの口座開設はまだ不十分



ここ数週間は日本でもアメリカでもとにかくコロナウィルスの影響に対応し、いかに安全を確保しつつ、業務を遂行するかに焦点が当たっています。


でも、コロナウィルスの騒動もいつかは過ぎる。その過ぎた後に基本的に元に戻ることと、コロナ以前の元の慣行には戻らず世界が変わる、という事柄があるかと思います。しばらく、「コロナ後の新世界に必要な対応」について考えていきたいと思っています。


金融について言えば、今朝もシティーバンクCEOのJamie Damon誌が、コロナによって、2008年当時のような金融恐慌が到来すると警告しています。


しかし、金融恐慌にしても不況にしても株式の暴落にしても、いずれは回復する。株式市場も落ちたものはまたいつかは上がるのでこれらは、「いずれ元に戻る」項目。


コロナ後のオンラインバンキング


一方金融界にとっての戻らない分野のひとつがオンラインバンキングに関わるものです。


アメリカでは銀行業務は必須産業とされているため、銀行の支店を閉める必要は無いのですが、従業員及び顧客の安全の確保から支店を閉めるとか、ドライブインATMだけに絞るなどと言う部分的な対応が相次いでいます。


これらの対応によって、ウェブまたはモバイルから簡単に銀行取引ができると分かったあと、同じことをするために日中時間をとって支店まで足をまた運ぶ人がどのくらいいるでしょうか。(ちろん、日中暇なお年寄りなどはあるかと思いますが・・・)


そこで、コロナ後の世界に対して金融機関は、これまで進んでいたデジタル対応をもっと急速に進める必要が出てきます。


米国6大銀行のモバイル口座開設を比較


その中の大事な要素の一つがモバイル口座開設。


これについて最近調査会社Forrester Researchが、米国の6大銀行のモバイル口座開設を比較しています。


モバイルウェブからの口座開設はモバイルアプリ内からとは違います。


モバイルアプリをダウンロードした後、その中からの口座開設ができる金融機関も多いのですが、ほとんどのユーザはその銀行との取引を決める前にわざわざ複数のモバイルアプリをダウンロードしたりはしない。


そこで、その金融機関のウェブサイト(アプリでなく、ウェブ上のモバイルサイト)はユーザーにとってその会社との最初の接点となるわけであり、このユーザエクスペリエンスを改良しておく事は極めて大事。ここのエクスペリエンスが悪ければその金融機関との取引をそれ以上進めないでしょう。


Thynk Digitalによる2019年の調査では、米国の銀行の幹部5人のうち3人(60%)が、依然として支店がその金融機関にとって1番大事な販売チャネルであると答えています。


このウェブやモバイルが進んだ世の中でちょっと驚く数字ですが、理由のひとつはモバイルウェブのエクスペリエンスがまだ十分に開発されていないため、ということです。


最近では外出先の時間がある時などに携帯電話で預金口座やその他の金融商品を比較する人が増えており(比較サイトも充実してきているため)、モバイルでの口座開設への対応は必須です。


今回フォレスターの調査で比較した金融機関はアメリカの上位6行:


Bank of America

Chase

Citibank

USAA

U.S. Bank

Wells Fargo


結論としては6つの銀行のいずれも満点を取ったわけでは無いが2行が際立っていた。


一位Bank of America、続いてWells Fargoでした。


Bank of America(バンカメ)が使いやすかったひとつの理由は、小さな画面の中に有効な情報をたくさん詰め込んでいるが、あくまでも有効な情報であり、ごちゃごちゃすぎて醜いと言う事はない。


今のモバイルウェブの一番の間違いはパソコンのウェブ上用に開発されたものを無理矢理、スマートフォンに詰め込んだこと。例えば長さが20行にわたりテキストが重く、スマートフォンの画面の横幅よりも広い製品企画チャートなど、とても見にくいものが多い。


バンカメは機能性とユーザエクスペリエンスの両方に優れ今回のランキングでトップの座を獲得。


そこで具体的に、バンカメのモバイルウェブサイトから口座を開くプロセスを実験してみました。


(ちなみに私は既にバンカメの口座を持っているので、最初の段階で「既に顧客である」と言う項目を選択すれば、後は情報のデータの自動入力が働き、ごく簡単に口座開設の申請ができるはずなのですが、今回あえて「全くの新規顧客」の前提でやってみました。



まずは初期画面。「普通口座」開設の他に、貯蓄口座、自動車ローンなどの選択もある



「口座開設」を選ぶと3種類の口座からの選択を画面下に提示。口座残高が少ない、中間、高額の残高をおきリレーション(個人のバンカーの担当者を希望)の3種。



上記3口座の内一つを選ぶと最初は郵便番号記入。これによって居住区域、全米のバンカメの内担当区域を割り出す



貯蓄口座も同時に開くか、既存顧客かなどの確認(ここで「既存顧客」を選ぶとその後のプロセスがかなり自動入力され早くなる)



住所・電話番号・ソーシャルセキュリティ番号などを入力。ここの部分はやはり手入力が必要。しかし画面が大きく見やすい。




3ページほど「開示項目」がある。ちなみに、上の画像で2カ所ぼかしてありますが、メルアド・氏名など個人情報がこの段階でチャッカリと「開示書類」に入っている



ここで申請プロセスを中止しようとすると「本当にいいの~~?ここでやめたら又、最初からやり直しだよ」という警告が出ます



本当に開設するわけにいかないのでとりあえずここまで。ちなみに、申請の最初のページで「申請全部で約10分かかります」とありましたが、確かに全部記入して10分ほどだと思います。もちろん「開示書類」を全部、スマホ画面で読んでいたらもっとかなり時間がかかりますが、重要な開示書類は後ほどメール送付されてきて、その時に目を通せば良い(実際には読まない人がほとんどだと思うけど・・・)



今回のリサーチでフォレスターは、モバイルウェブの1番の問題は過剰な情報。小さい画面に情報がたくさん詰め込まれているために、ユーザーが自分の探しているコンテンツを見つけるのが困難であると言っています。


一方不足している情報としては、この6つの銀行のうち、「既存の顧客の評判」とか「他行との差別化」を前面に打ち出しているものが1つもなかった。それであると新規顧客の候補にとっては、どうしてその銀行を選ばなかったければいけないかと言う情報がないわけです。


金融のデジタル化・モバイル化はここ数年発展してきましたが、「コロナ後」にますます、拍車がかかる見込みが多く、上記を含め「顧客体験」への対応が必須と言えそうです。


参考記事:





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著者について

 

 

在米30+年、サンフランシスコ近郊在住の金融戦略コンサルタント。主に日本の金融業向けに米国フィンテック事情・フィンテック・ベンチャーを参考とした金融イノベーション戦略、ベンチャー提携サポートを提供。

証券・銀行・投資業務・フィンテック・ベンチャー参加を経て独立。

東京外国語大学卒業、スタンフォード大学MBA。

 

ダイエットに苦戦中。

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