ゴールドマン・サックスの消費者向け戦略
1月の終わりに大手投資銀行であるゴールドマンサックスのインベスター・デイ(投資家向けの報告会)が1日がかりでありました。
その中で特にフィンテック関連として注目しているのは3年ほど前に導入した消費者向け新ブランド、Marcusで、今日はこれについてちょっと話します。
元は法人・富裕層向けの投資銀行
ご存知の方も多いと思いますがゴールドマン・サックスはもともと投資銀行としてアメリカで有数の金融機関。
なのでもとの顧客層は主に法人(それも大手企業)、そして富裕層向け投資顧問業務が主でした。
それが消費者向け、(消費者といっても中高所得層だが)セグメントを打ち出したのが3年ほど前。
当初、2016年の終わりに、消費者向けにカードローンを返済しその代わりにもっと安い金利で借り換えられるローンのマーカス(Marcus)というラインを打ち出し、その後同じくMarcusのブランドで貯蓄口座、(米国ではSavings Accountという)、高金利の貯蓄口座を打ち出しています。
この貯蓄口座が、当時2.25%の利息が付き、これは日本より金利が高めの米国でも、いつでも引き出せる貯蓄口座の利息としては非常に高く、注目されました。
また当時サンフランシスコの地下鉄等でかなりの場所をとって大々的にリアルで宣伝しており、そこで目についたと言うこともあります。
その後利率は2.25%から2.15%に引き下げられたのですが、それでも2%以上の利息は高い。
このMarcusのブランドは、少なくとも預貯金をかき集めると言う意味では非常に成功しており、今年の投資家向けの発表で見ると2014年には消費者向け消費者からの預金が全くゼロであった同社が、2019年末時点ではこのマーカスが600億ドルの預金(約6.6兆円)を獲得。
全体の預かり資産としても元からあった投資顧問業と合わせた預かり高が約3倍に増えています。
またこのマーカス部門の伸びとしては2016年から2019年まで顧客は200,000人から5,000,000名に増え、収入は2,000,000ドルから8億6000万ドルまで増えています。
さて、今後の戦略としてゴールドマン・サックスでは目的は「消費者向けのデジタルバンクとしてトップクラスになること」としており来年度2021年には貯蓄口座のほかに普通預金口座も始めるとしています。
これについて金融コンサルティング会社のコーナーストーンが消費者にアンケートを行ったところ、8%超の回答者がマーカスの普通口座を開設する意思があると答えています。
既存の銀行にとっては、フィンテックのベンチャーのほかに、こういった、金融の他のセクターからの参入も注目しフォローする必要がありそうです。
(Goldman Sachs社の戦略の参考としてはこちらInvestor Dayのリンクに資料が山ほど載っています。)
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